相続対策としての生前贈与の位置付け
2023/08/04
みなさんこんは。福岡相続対策センタ-の中野です。
生前贈与という手段を3つの観点から検証してきます。
まず、生前贈与という手段を考えた場合3つのうち、どの目的のために行使する手段かを考えると、概ね答えは一致します。
節税対策
生前贈与は、目的のために実行する。この回答が最も多くなります。
上の世代の財産を下の世代に移動させる被相続人の財産額を減少させることで、結果として、節税対策となります。
暦年課税制度、相続時精算課税制度を使って贈与することもあれば住宅取得等資金贈与を使って
贈与することもあるかと思います。
どれを選択しても被相続人の財産額は減少します。
以下の事例で考えます。
父の推定相続人は、長男・次男の2人。父は自宅売却後、老人ホームに居住。
長男は転勤族で賃貸マンションに居住。次男はマイホームを住宅ローンで購入。
自宅売却後、多額の現金を保有している父は長男の自宅購入に際し、住宅取得等資金を贈与することに決めた。
税理士の立場としては、・要件を満たすかの事前チェック
・申告期限内に贈与税申告が担当する業務となります。
本当にこれだけで問題が生じないでしょうか。
「父は長男へ住宅取得等資金を贈与した」ことだけを税務的に捉えれば上記のとおりです。
長男が資金を受贈したということは裏を返すと・・・次男は資金を受贈できなかったということになります。
自宅を購入済みの次男は、住宅取得等資金贈与の要件を満たさないため資金を贈与してもらうことはありませんでした。
その原因は、要件を満たさないため余分な贈与税負担が生じるというものだったはずです。
次男の立場になれば、長男と同様に1,000万円の資金を贈与してほしいと願うはずです。
それが177万円の税金負担が生じたとしてもです。
父から長男への住宅取得等資金贈与は結果として、次男にとっては不満を残すものになります。
これは、相続対策におけるNo1争続対策 の裏返しとなります。
つまり、家族間紛争の原因となります。また、住宅取得等資金贈与を受けた長男は、受贈した結果自らの資金拠出を減らすことになります。
その分の資金を貯めれば納税資金・分割調整資金となります。
つまり、相続対策におけるNo2 納税資金対策・分割調整資金対策としても機能します。
住宅取得等資金だけではなく、暦年課税や来年から要件緩和される相続時精算課税
で110万円を贈与した場合であっても同様のことが言えます。
例えば、贈与で取得した資金
で契約者:長男被保険者:父
保険金受取人:長男
とする保険に入っておけば、父の相続発生時に保険金を受領し(一時所得課税)、その資金を納税資金・分割調整資金とすることも可能となります。
生前贈与を一側面で捉えるのではなく贈与後の資金使途まで考えることでNo2 納税資金対策・分割調整資金対策となります。
ただし、生前贈与はNo1争続対策 の裏返しとなる、ということには配慮が必要と考えます。
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